明治・大正・昭和の三代に渡りご使用になられた「沼津御用邸記念公園」
当時の皇室の生活を偲ぶことができる「西附属邸」の見学レポートです

沼津御用邸記念公園 西附属邸


西附属邸レポート 基本観光情報
 

西附属邸レポート

「沼津御用邸記念公園 西附属邸」の看板案内図

「沼津御用邸記念公園 西附属邸」の看板案内図

御車寄(みくるまよせ)

皇室の方々が御車から降りて玄関にお入りになる場所で、現在「西附属邸」見学の入場口として利用されています。

沼津御用邸記念公園 西附属邸 御車寄

この「御車寄」でぜひ注目してもらいたいのが、その屋根。
正面中央部分には、猪目懸魚(いのめけぎょ)の装飾が施されています。
また鬼瓦には、皇室を表す御紋章の16弁の菊がデザインされています。
しかも両サイドは、立体的。
無骨な屋根にかわいらしく咲いた菊の花に、なんだか微笑ましくなってしまいます。

沼津御用邸記念公園 西附属邸 御車寄の屋根

和風の建物ですが、照明は洋風デザイン。
建物の随所に、和洋折衷が取り入れられています。

ここで靴をポリ袋に入れ、持ち歩きながら見学します。

沼津御用邸記念公園 西附属邸 御車寄の照明

中庭

「御車寄」を入った正面には、一面に白い砂利を敷き詰めた中庭があります。
この中庭は、後ほど見学する「御料浴室」へお湯を運ぶための通り道としても利用されていました。

沼津御用邸記念公園 西附属邸 中庭

「西附属邸」内は時計回りに見学します。
赤い絨毯の敷かれた廊下を進んで行きます。
廊下をまっすぐ進んだ先は、お仕えする方たちが主に使用するエリア。
皇室の方々は、右手にある渡り廊下を進めばすぐに「御座所」に向かうことができました。

沼津御用邸記念公園 西附属邸 玄関を入ってすぐにある廊下

三輪自転車

1914(大正3)年、昭和天皇が学習院初等科時代にお乗りになった自転車の複製です。

沼津御用邸記念公園 西附属邸 三輪自転車

お仕えする方たちが利用していた浴室。

沼津御用邸記念公園 西附属邸 使用人たちが利用していた浴室

調理室

皇室の方々の食事を作っていた場所です。
採光や排煙を兼ねた天窓があり、大変明るくなっています。
当時のままの流し台は、4つに区切られた珍しい形。
色々な作業を同時進行することができるので、調理がはかどりそうですね。

沼津御用邸記念公園 西附属邸 調理室

外から眺めた「調理室」の天窓の様子。
天窓の側面の窓は可動式で、ロープを使って開閉していたそうです。

沼津御用邸記念公園 西附属邸 調理室の天窓

湯沸所

「御用邸」では、火事にならないよう細心の注意が払われていました。
「調理室」でも炭火などを用いる程度で、大きな火を使う場合は別棟の「湯沸所」にある竈を利用していたそうです。

写真の石造りの建物が「湯沸所」。
その左側に見えるガラス窓のところが「調理室」です。

沼津御用邸記念公園 西附属邸 湯沸所

内玄関

こちらの玄関は、宮内庁の職員や御用邸に出入りする商人などが使用していました。

沼津御用邸記念公園 西附属邸 内玄関

「内玄関」の外観の様子。

沼津御用邸記念公園 西附属邸 内玄関

侍従候所(じじゅうこうしょ)

侍従が使用していた部屋は現在展示コーナーとなっており、餝(かざり)金具や焼失してしまった本邸の模型などが展示されています。

沼津御用邸記念公園 西附属邸 侍従候所

旧沼津御用邸本邸復元創造模型

沼津御用邸記念公園 西附属邸 旧沼津御用邸本邸復元創造模型

電気スタンドを運ぶ為の丈夫なトランクが展示されています。
当時、経費の無駄を省く為に「御用邸」には物を置きっぱなしにせず、皇室の方々が「御用邸」にご滞在されるとき、その都度全ての荷物を運び込んでいたようです。
身の回りの品物を始め一切の家具や備品、新鮮な牛乳を搾るために牛も連れてきて飼っていました。

沼津御用邸記念公園 西附属邸 電気スタンドを運ぶ為の丈夫なトランク

御日拝室(ごにっぱいしつ)

お祈りなどをされたお部屋です。

沼津御用邸記念公園 西附属邸 御日拝室

ここには、昭和天皇が御幼少のころ着用された「ちゃんちゃんこ」や、昭和天皇と秩父宮様のご幼少期の貴重な写真などが展示されています。

沼津御用邸記念公園 西附属邸 御日拝室の展示

供進所(くしんじょ)

皇室の食事を盛り付けたり配膳をしたお部屋です。
昔は皇室の方がお召し上がりになる1時間前に、侍医などが皇室の方のご体調に内容があっているかどうか、料理を小皿にとって点検していたそうです。
その後、「調理室」で改めて作った料理を、この「供進所」で盛り付け、「御食堂」に運んでいました。

沼津御用邸記念公園 西附属邸 供進所

この「供進所」も天窓が設けられ、手元が大変見やすくなっています。

沼津御用邸記念公園 西附属邸 供進所の天窓

御食堂(おしょくどう)

皇室の方々がお食事を召し上がったお部屋です。
椅子の背もたれやテーブルクロスには菊の御紋章が施されています。
昭和天皇はそばがお好きで、毎月30日には手打ちした晦日そばをお召し上がりになっていたそうです。

沼津御用邸記念公園 西附属邸 御食堂

謁見所(えっけんじょ)

天皇陛下がご滞在中、来客に面会するときに使用されたお部屋です。
畳の上に絨毯が敷き詰められ、中央には更にもう1枚絨毯が敷かれています。
欄間(らんま)は障子の向こう側が透けて見え、縦の桟を細かく入れた筬欄間(おさらんま)だということが伺えます。
来客用の椅子には、黒漆に金の装飾が施されています。

沼津御用邸記念公園 西附属邸 謁見所

玉座用肘掛椅子

右側の椅子が、玉座用肘掛椅子です。
明治11年ごろまでに作られたとされ、かれこれ140年の歴史をもち日本を代表するような宮廷家具です。
梨地(なしじ)漆に金の高蒔絵(たかまきえ)で菊の御紋章が描かれています。

沼津御用邸記念公園 西附属邸 玉座用肘掛椅子

「西附属邸」の至る所でコンセント口を見かけますが、コードが見当たりません。
それらは全て床下に隠しているそうです。

沼津御用邸記念公園 西附属邸 コンセント口

「謁見所」から「御座所」に向かう渡り廊下の様子。
凹凸に波打ったガラスは味わいがあり、当時の雰囲気を漂わせます。
修復の際、この凹凸ガラスを国内で手に入れることが難しく、ドイツで手作りされたものを使用しているそうです。

沼津御用邸記念公園 西附属邸 渡り廊下の凹凸ガラス

御座所(ござしょ)

渡り廊下から先は皇室の方々の居住部分として使用されていた建物となり、「御座所」は居間として用いられていました。

沼津御用邸記念公園 西附属邸 御座所

「御座所」のシャンデリアをよぉ~く見ると、左右に菊の御紋章が刻印されています。
この部屋の釘隠しにも、よくよく見ると菊の御紋章。
御用邸の至る所にある飾り金具は、部屋毎にデザインが異なっているので、見比べながら見学するのもお勧めです。

沼津御用邸記念公園 西附属邸 御座所のシャンデリア

「御座所」から「御寝室」や「御着換所」に続く廊下は、二重廊下となっています。
皇室の方は右側を、御付の方は窓側を使用していました。
ここでは、頭上にご注目!
照明の位置が左側にズレています。
これは、皇室の方の頭上に物を置かないよう配慮されているそうです。
また、畳の縁(ヘリ)に注目すると、ちゃんと模様合わせもされています。
随所に細かな配慮が見られます。

沼津御用邸記念公園 西附属邸 二重廊下

房付きの大変珍しい照明。

沼津御用邸記念公園 西附属邸 二重廊下の電灯

「御寝室」や「御着換所」の様子。

沼津御用邸記念公園 西附属邸 御寝室 御着換所

御玉突所

この「御玉突所」は「西附属邸」の中で最も新しく、1922(大正11)年に増築された建物です。
明治時代、玉突(ビリヤード)は上流階級の人々に人気がありました。
当時の政府高官や実業家の邸宅には、玉突所を設けた様子が多く見られます。

沼津御用邸記念公園 西附属邸 御玉突所

「御玉突所」の外観。
他が和風の造りなのに対して、この「御玉突所」は唯一洋風の造りとなっています。

沼津御用邸記念公園 西附属邸 御玉突所の外観

ズラッと並んだ照明のスイッチ。

沼津御用邸記念公園 西附属邸 電灯スイッチ

「脱衣室」の様子。
畳が敷かれています。

沼津御用邸記念公園 西附属邸 脱衣所

御料浴室(ごりょうよくしつ)

当時の皇室の方々のご入浴は、浴槽に入らず白衣の上からお湯を掛けてもらう掛かり湯式でした。
白衣は有事の際でもすぐに、避難できるように着用していたそうです。

この「御料浴室」の床は内側に向かってやや傾斜しており、真ん中に設けられた排水溝から床下に排水される仕組みとなっています。
写真では、横に細長く板か置かれていますが、その下が排水溝となります。

また、御殿の中で火を使うことをできるだけ避けていた「御用邸」では、「御料浴室」にも湯沸かしの設備がなく、お湯は「湯沸所」で沸かしていました。
「湯沸所」で沸かしたお湯は、桶に入れて天秤棒に担ぎ、約50mの距離を運んでいたそうです。

沼津御用邸記念公園 西附属邸 御料浴室

ではでは、そのコースを辿ってみましょう。
写真の左に見える石造りの建物が「湯沸所」
右側にちょこっと見える赤いバケツの所に向かって行き…

沼津御用邸記念公園 西附属邸 湯沸所

「御車寄」の脇の外階段を下って上って…

沼津御用邸記念公園 西附属邸 御車寄脇の階段

「中庭」を通り…

沼津御用邸記念公園 西附属邸 中庭

「御料浴室」まで運んでいました。

写真の左側に緑の木が見えるところが「中庭」。
「御料浴室」は階段のある木造の建物。
「御料浴室」の脇を通路として利用していました。

沼津御用邸記念公園 西附属邸 御料浴室

デジタル磁石卓上電話機

御用邸の中に、電話ボックス?!!
「女官室」の近くにあるこの電話は、主に市内通話用に使用されていたようです。

沼津御用邸記念公園 西附属邸 デジタル磁石卓上電話機

「西附属邸」では、当時の皇室の生活を偲ぶことができます。
海外の王室となると、もっと華やかなイメージとなりますが、この「西附属邸」では、そのイメージとは対照的な印象を受けます。
もちろん大変素晴らしい建造物ではありますが、派手なところが見当たりません。
ふと、赤坂離宮を「贅沢すぎる」という理由で殆どご使用なさらなかった明治天皇や大正天皇のエピソードが思い起こされます。
「西附属邸」では、模範となるような質実な生活をなさっていた皇室の暮らしを偲ぶことができます。
また、お仕えする方たちの万全なサポート体制の痕跡も見逃せません。
このレポートだけでは上手く伝えきれない箇所も多々ありますので、ぜひご自身で足をお運びください。

沼津御用邸記念公園 西附属邸 屋根に菊の御紋章
 
 
 
 
  • 2018年11月15日
  • 掲載する内容は正確性を心がけておりますが、現地の事情や状況の変化により当てはまらない場合もございます。 お出掛け前に、現地にご確認くださいませ。

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