伝説の車両や日本初公開の車両など約40台の貴重なレースカーが、メーカーや国境の垣根を越え集結した博物館「富士モータースポーツミュージアム」。

「富士モータースポーツミュージアム」は、富士スピードウェイに隣接し上質なホスピタリティを提供する「富士スピードウェイホテル」の1～2階部分にあります。

エントランスを入ってすぐ、目に飛び込んでくるのは「トヨタ7」。
「えっ、宙に浮いているの？」と勘違いしてしまうディスプレイが、強烈なインパクトを与えてくれます。

実はこれ、車体底面も見ることができるんです。
ぜひ裏側も覗いてみてくださいね。

展示は黎明期から発展期、未来へと時代に合わせ大きく進化するモータースポーツ史を辿るよう、テーマ毎に分かれレイアウトされています。

この博物館のすごいところは、唯一無二の貴重なレース車両が一堂に集結しているところです。
しかも、トヨタ車だけでなく日産やホンダ、フォード、ポルシェ、ベンツなどメーカーや国境の垣根を越えて。
国内外メーカー10社から貸与された貴重なマシンが、整然と並んでいる姿に圧倒されます。

車の進化を語る上で欠かせない、大きな役割を果たしたマシンも多数展示されでいます。

フロントエンジン・リア駆動（FR方式）を初めて採用し、”近代自動車の祖”と称される「パンァー・エ・ルヴァッソール Type B2」。
1894年に開催された世界初のモータースポーツイベント「パリ～ルーアン・トライアル」でEVや蒸気機関自動車に勝利し、ガソリン車普及のきっかけを作ったマシンです。

戦後間もない日本で、レース参戦によって国産車発展を強く願うトヨタの創業者・豊田喜一郎とよだきいちろう氏の想いのもと製作された「トヨペット・レーサー」。
欧米に遅れをとった日本の技術を導こうとした熱い思いを感じ取ることができます。

トヨタの若手技術者を中心としたメンバーが見事復元した1台を、展示しています。

1階の1番奥には、1969年のレースでそれぞれ活躍した2台が展示されています。
白いボディに青いストライプの「トヨタ7」は、前年まで搭載していた3リッターV8エンジンを5リッターV8に変更し「ワールドチャレンジカップ富士200マイル(日本Can-Am)」で優勝したマシンです。
青いボディの「R382」は、前年まで搭載していたシボレー製V8エンジンを自社製6リッターV12エンジンに変更し日本GPで熱いバトルを繰り広げました。
レース史を振り返る上で欠かせない革新を施されたマシン達です。

ル・マン24時間レースで活躍した2台が並ぶコーナーは、ファン必見のスポットです。

1991年のレースを制した「マツダ787B」と、1999年のレースでトップを猛追しながら2位となった「トヨタGT-One」が並んで展示されています。

ここでは人感センサーによって、レース会場さながらの臨場感あふれるエンジン音が響き渡ります。
当時の感動を再び呼び起こす、心憎い演出です。

まだまだ他にも、前輪ブレーキ装着の礎を築いた「サンビーム・グランプリ」や
フォード設立の資金調達に貢献した「レーシングカー999」、
スピードトライアル世界記録を樹立した「トヨタ2000GT」、
ホンダにF1初勝利をもたらした「ホンダRA272」などなど・・・
伝説のマシンがここでは紹介しきれないほど並んでいます。

どの車も広い展示スペースが割り当てられ、周囲360度から車両を観察できます。
他の展示会場だと目にすることができなかった部分も、じっくり観察できるなんて嬉しいですね。

ミュージアムでは貴重な車両にばかり目が行きますが、その周囲に展示された資料もお見逃しなく。
当時のデータや開発の裏側を知ることで、技術革新の流れをより深く理解できます。

見学後は、ぜひ3階のショップ&カフェ「Fan Terrace」へ。

ショップには、ミニカーや書籍、スタイリッシュな限定アイテムまで、モータースポーツファンでなくても魅力を感じる商品が豊富に揃っています。

カフェでは、コーヒーや紅茶、ノンアルコールカクテルなどのドリンクの他に、日替わりスイーツなどの軽食も楽しめます。

おしゃれなインテリアで、長居したくなってしまいますね。

全長50mの屋外テラスもお勧めです。

ここからは、最終コーナー「パナソニックコーナー」と「メインストレート」を中心にサーキットの壮大なパノラマを楽しむことが出来ます。

レースが無い日でもタイミングが良ければ、体験走行などが行われています。
サーキットから伝わる空気の振動やマシン音を体感することができますよ。
贅沢なカフェタイムですね。

屋外テラスからの眺め。

「富士モータースポーツミュージアム」は、貴重なマシンが展示されているだけでなく、モータースポーツの進化の過程も学ぶことが出来ます。

1つ1つのマシンにまつわる開発エピソードを知ると、モータースポーツの歴史や技術開発に携わる人々にどんどん興味が湧いてきます。
開発に傾けられた情熱を感じることで無機質なマシンへの見方がガラッと変わり、時間が経つのを忘れ館内を何往復もしてしまいました。

モータースポーツに興味が無い人でも、ミュージアムの洗練された雰囲気は一見の価値があります。
非日常感を味わうことができる空間に、ぜひ足を延ばしてみてください。