富士山の恵みと匠の技が生み出す、極上ウイスキーの世界「キリンディスティラリー富士御殿場蒸溜所」

キリンディスティラリー
富士御殿場蒸溜所

2025.1.22
キリンディスティラリー 富士御殿場蒸溜所

注目ポイント

ウイスキーの製造工程と魅力を味わいながら楽しく学ぶ蒸留所見学

富士御殿場蒸留所は、富士山のふもと、標高600mに位置するウイスキー製造拠点です。
ここは、スコットランド式のモルトウイスキーとアメリカ式のグレーンウイスキーを、仕込みからボトリングまで一貫して製造している世界的にも非常に珍しい蒸留所です。

この蒸留所では見学ツアーが行われており、製造工程に沿った見学をしながら、ウイスキーの魅力を存分に味わうことができます。
6基のポットスチル(蒸留器)や木桶発酵槽など、実際に稼働している製造設備を間近で見られるのも大きな魅力です。

ツアー後には、ウイスキーの試飲や洋酒・ノベルティのショッピングが楽しめるのも嬉しいポイント。
さらに、敷地内には遊歩道が整備されており、豊かな自然を満喫しながら散策することもできます。

項目 モルトウイスキー グレーンウイスキー
技術 スコットランド式 アメリカ式
原料 発芽した大麦を乾燥させた麦芽のみを原料とする。 麦芽以外の穀類を主原料とする。
富士御殿場
蒸溜所
おもにイギリス産のノンピート麦芽を使用。 コーン、ライ麦などの原料を使用。

ウィスキー挑戦の舞台として選ばれた御殿場

1960年代後半、ビール市場が伸び悩む中、麒麟麦酒キリンビールは新たな事業分野への進出を模索していました。
当時、消費者の間で洋酒市場が成長しており、そのブームに着目した麒麟麦酒キリンビールは、1969年の洋酒輸入自由化を契機に、シーグラム社と提携してウイスキー製造へと乗り出しました。
1971年、数ある候補地の中から御殿場市をウイスキー製造に最適な場所として選定。
その理由は、豊かな自然環境にありました。
御殿場市は、豊富な水量と良質な水質が確保でき、霧が多く気候がスコットランドのハイランド地方に似ていたからです。
さらに、東名高速道路や国道246号線に近く、原料や製品の輸送が便利だったことも大きな要因です。

こうした恵まれた環境のもと、1973年に蒸留所が完成し、キリン・シーグラム社として国産ウイスキーの製造が始まったのです。
2002年7月には、ペルノ・リカール(旧・シーグラム)との合弁を解消し、麒麟麦酒キリンビール100%出資の会社として現在に至っています。

1969年3月 洋酒の50%資本自由化、輸入自由化。
シーグラム・オーバーシーズ・セールス・カンパニー(以下、シーグラム)から提携の打診を受ける。
1971年1月 合弁会社を設立して蒸留酒製品およびワインの製造・販売を行う覚書をシーグラムと締結。
1971年9月 シーグラム製品の国内販売開始。
1972年8月 キリン・シーグラム株式会社設立。
1973年8月 約56億円の建設費を投じて御殿場工場が完成、製造開始。
2002年7月 ペルノ・リカール(旧・シーグラム)との合弁を解消、麒麟麦酒キリンビール100%出資会社に。
社名をキリンディスティラリー株式会社に変更。

現地レポート

「キリンディスティラリー 富士御殿場蒸溜所」の看板案内図

キリンディスティラリー 富士御殿場蒸溜所 看板案内図

御殿場市北西部にある「キリンディスティラリー富士御殿場蒸溜所」。
ここは無料駐車場を完備しているので車での訪問も可能ですが、せっかくならウイスキーの試飲も楽しみたいですよね?
そんな方には御殿場駅から運行する無料シャトルバスがお勧め。
1日5往復しており、帰りの足を気にせず安心して楽しむことができます。

キリンディスティラリー 富士御殿場蒸溜所 外観

工場の敷地に入るとまず目を引くのが、大きなポットスチル。
これはモルトウイスキー製造に使用する蒸留器で、現役引退したものが工場のシンボルとして入口に飾られています。
銅製の美しいフォルムが、ウイスキーづくりの伝統と技術を物語っています。

キリンディスティラリー 富士御殿場蒸溜所 ポットスチル

御殿場駅から約20分で、蒸留所に到着。

キリンディスティラリー 富士御殿場蒸溜所 建物
受付

到着後、まずは受付で名前と住所を記入し、運転の有無が一目でわかるタグを受け取ります。
ドライバーの方は、もちろんアルコールの試飲はNGです。

キリンディスティラリー 富士御殿場蒸溜所 受付
支払い

受付後は、券売機でお支払い。
現金はもちろん、クレジットカードや電子マネーも使えるので便利です。

キリンディスティラリー 富士御殿場蒸溜所 券売機

見学開始時間までは、待合室の展示物などを眺めて過ごします。

待合室にはコンペで受賞した数々のウイスキーが展示されており、その歴史や実績を知ることで、ますます期待が高まります。

キリンディスティラリー 富士御殿場蒸溜所 待合室
シアター

時間となり、いよいよ見学スタート!
初めはシアタールームでの映像体験から。
全長約12メートルのスクリーンにプロジェクションマッピングが映し出され、蒸溜所の歴史やウイスキー作りのこだわりを分かりやすく紹介してくれます。
初心者でも楽しめる工夫満載の演出は、まるでアトラクションのよう。
思わず見入ってしまいました。

シアタールーム内は撮影禁止のため、写真は待合室のものです。

キリンディスティラリー 富士御殿場蒸溜所 待合室

映像を楽しんだ後は、蒸溜所内を歩きながらウイスキーの製造工程を見学します。

最初に訪れるのは、ウイスキーの種類やその原料について解説するエリア。
パネルや実物を使った説明はわかりやすく、富士御殿場蒸溜所ならではのこだわりが感じられます。

キリンディスティラリー 富士御殿場蒸溜所 見学コース

この富士御殿場蒸溜所は、モルトウイスキーとグレーンウイスキーの2種類の原酒が、ひとつの蒸溜所で製造されている世界でも本当に珍しい蒸留所。

実際に設備や原料を間近に見ながら説明を聞いてみると、この蒸溜所ならではの技術によって個性豊かなウイスキーが生まれる理由がよく分かります。

キリンディスティラリー 富士御殿場蒸溜所 原料
発酵

次はウイスキーの香りや味わいを決める重要な工程・発酵を担うエリアを見学。

キリンディスティラリー 富士御殿場蒸溜所 発酵タンク

富士御殿場蒸溜所ではステンレス製の発酵タンクに加え、2021年に木桶発酵槽を新たに導入。
木の表面に棲みつく乳酸菌の働きが、より複雑で奥深い香りのモルトウイスキーを生み出しているそうです。
木桶ならではの温かみを感じる造りも見どころのひとつです。

キリンディスティラリー 富士御殿場蒸溜所 木桶発酵槽
蒸留

次のコーナーでは、実際に蒸留に使われているポットスチルを間近で見ることができます。
ポットスチルは、まさに蒸溜所を象徴する存在。
銅製の美しいフォルムとサイズ感には思わず圧倒されます。

キリンディスティラリー 富士御殿場蒸溜所 ポットスチル

富士御殿場蒸溜所では、初留用と再留用の2基を1セットとして、なんと合計3セット6基の蒸留機が稼働中!
大きいタイプの1セットは操業当初から使われていましたが、老朽化に伴い 2023年に新しく交換。
手前が新しいポットスチルで、奥はそれに先立ちに導入した小型のポットスチルです。
それぞれ形や大きさが異なり、見比べるだけでも興味深いです。

他にも、かつてグレーンウイスキー原酒の製造に使われていた貴重なマルチカラム(多塔連続式蒸留機)も展示されているので、お見逃しなく。

キリンディスティラリー 富士御殿場蒸溜所 ポットスチル
樽詰め

次は樽詰めの製造ラインを見学。
蒸留器から取り出されたウイスキーは樽に詰められます。
ここで使用されているのは大樽ではなく、180リットルの小さい樽。
保管や管理に手間がかかるものの、その分、樽と液体が密に触れ合い、ウイスキーに豊かな香りが生まれるそうです。
「より良いウイスキーを生み出す」為の現場のこだわりに、思わず感心させられます。

キリンディスティラリー 富士御殿場蒸溜所 樽詰めの製造ライン

樽詰めしたウィスキーは、熟成庫の中で長い眠りにつきます。
見学コースでは実際の貯蔵庫でなく、展示用の貯蔵庫を見ることができます。
実際の貯蔵庫は10階建てビルに匹敵する高さもあり、中には数万の樽を保管することができるそうです。

キリンディスティラリー 富士御殿場蒸溜所 展示用の貯蔵庫
熟成

ウイスキーが樽で熟成する間、液体は徐々に琥珀色へと変化し、同時に少しずつ蒸発していきます。
この現象は「天使のわけまえ(Angels' shareエンジェルズシェア)」と呼ぶそうです。
例えば20年熟成だと、中身は約1/3に減少。
だからこそ、長く熟成されたウイスキーは香りや味わいが深まり、希少価値が高くなるのですね。
天使がこっそり味見している…なんてロマンチックな表現ですね!

キリンディスティラリー 富士御殿場蒸溜所 ウィスキーの変色
瓶詰め

最後に見学するのは、瓶詰めの製造ライン。
ここでは熟成したウイスキーが瓶に詰められ、パッケージングされる様子を見ることができます。
蒸溜から製品化まで一貫管理し、厳しい検査を経て完成したウイスキーが、ここから世界中のテーブルへ旅立っていきます。

キリンディスティラリー 富士御殿場蒸溜所 瓶詰め製造ライン
試飲

見学の締めくくりは、お待ちかねのウイスキー試飲タイム!

「キリン シングルグレーンウイスキー富士」と「キリン ウイスキー陸」を味わうことができます。
「陸」をストレートで楽しんだ後、伏流水を加えて香りの変化を体感。
「富士」はカカオ70%のチョコレートとのペアリングで、絶妙な味わいのマリアージュを楽しみました。

見学後の1杯は、作り手の情熱を感じる格別な美味しさでした。

キリンディスティラリー 富士御殿場蒸溜所 試飲

ドライバーやお酒が苦手な方には、ソフトドリンクやノンアルコールチューハイも用意されているので、ご安心ください。

キリンディスティラリー 富士御殿場蒸溜所 ノンアルコールメニュー
有料試飲

さらにもっと試飲を楽しみたい方の為に、有料試飲も用意されています。
売店でお会計を済ませ、専用バーカウンターで注文。
ここでは限定ウイスキーも、味わうことができますよ。

キリンディスティラリー 富士御殿場蒸溜所 有料試飲
売店

隣接するお土産コーナーには、限定ウイスキーやオリジナルグッズが数多く並んでいます。
蒸溜所限定銘柄のウイスキーは特に人気で、多くの人が手に取っていました。
さらに、グラスやコースター、オリジナルタオルといった小物類も充実しており、見ているだけでも楽しめます。

キリンディスティラリー 富士御殿場蒸溜所 売店
キリンの森

売店脇のドアから外に出ると、階段下には自然豊かな「キリンの森」が広がります。
野鳥のさえずりや四季折々の草花を楽しめる散策コースで、シャトルバスの時間を待つ間、ここでのんびり過ごすこともできます。

キリンディスティラリー 富士御殿場蒸溜所 キリンの森

富士御殿場蒸溜所では、ウイスキー作りに対するこだわりや技術を感じながら、五感でその奥深い世界を味わうことができます。
見学後にいただくウイスキーは、作り手の想いが伝わってくるようで、いつも以上に美味しく感じられました。
ウイスキー好きはもちろん、初めての方でも楽しめる内容ですので、事前予約の上、ぜひ足を運んでみてください!

キリンディスティラリー 富士御殿場蒸溜所 歴代ウィスキー

基本情報

住所 静岡県御殿場市柴怒田970番地
TEL 0550-89-4909
お休み 毎週月曜日 (祝日の場合は営業、次の平日が休館)、設備点検日、年末年始
スタート時間
平日 10:30~14:10
土日祝 9:30~14:10
所要時間 約80分(工場見学60分、テイスティング20分)
料金
20歳以上 ¥500

20歳以上の方はアルコールのテイスティングをされない場合も参加費が必要となります。

19歳以下 無料

20歳以上の保護者同伴でお申し込みください。

駐車場 有り(無料)
アクセス

東名御殿場ICから約8.5Km(約15分)

JR御殿場駅 箱根乙女口 一般バス乗降場④からシャトルバス乗車(約20分)

サイト
参考資料 キリンビールの歴史. 新戦後編 (出版者:キリンビール)
  • 掲載する内容は正確性を心がけておりますが、現地の事情や状況の変化により変更する場合もございます。
    お出掛け前に、現地にご確認ください。

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